農業を志す人は必見!メロンより甘いとうもろこし農家 #2
Interview
原村
2017.1.9
お中元やお歳暮をはじめ、様々な「お土産」は日本固有の文化。
以前は企業活動を円滑に進める法人ギフトから個人間のパーソナルギフトが盛んになり、個人の趣味嗜好が重要視された個性的なギフトが話題になっています。人々が個々の思いを表現できるとの期待から、各地の特産品などに光を当てた「日本ギフト大賞」。2015年の日本ギフト大賞では長野県原村の「HAMARA FARM」八ヶ岳生とうもろこしが大賞を受賞しました。
同じ原村出身で幼馴染の二人が作り上げた生とうもろこし。
研究から収穫、販売まで様々な苦労を乗り越えた経験をお聞きしました。また、これから農業を始めたいという方へメッセージもいただきました。
Q.農業を始めたきっかけ。
正直、偶然というか何も考えていませんでした。元々、会社員だったんですけど「自分達で何か出来ないか?」と前々から思っていて、二人同時に会社を辞めました。その時に実家で農業を営んでいた祖父達が高齢で引退を考えているのを知り、せっかく畑も農機具もノウハウもあるのでやってみようと決意しました。祖父達は家で食べる物や出荷する物、ほうれん草やブロッコリーなど何十種類も作っていたんですが、自分達がやりたかったのは「直売」だったんです。消費者に直接販売する事が非常に魅力的でした。そこで消費者が喜ぶ物は何なんだろうと考え、味に違いが出やすい物、ちゃんとこだわりを持ってやれば伝わる物を主力でやって行こうと考え、4年から5年かかって「とうもろこし」にたどり着きました。
Q.原村は適しているんですか?
夏野菜を作るにあたっては、昼夜の寒暖差は夏の間は15度以上違って、また日照時間によっても色が違ってきます。それによって糖度も変わってきますのでそういった意味では原村は適していると思います。あとは地元の肥料などを使ってこだわり抜いた製法をやっていこうと思っています。
Q.信州の農業について
県外に出る度に思いますが、標高や立地条件も含めて首都圏や関西を中心に評価が高いなと思います。
Q.HAMARA FARMについて
私達は幼馴染なんですが、原村の仲間で何かやりたいなと思い「原仲間」という意味でこの農園を作り上げました。
Q.生とうもろこしについて
自分達はポイントを三つに絞りました。 1.糖度の高さ 2.生で食べてもらう 3.ギフト向けに出せる この原村はとうもろこし作りに適していると共に、土づくりなど見えないところに拘りを持つことも大事ですが、収穫とお客様に届くタイミングを強く意識しました。贅沢な話で言えば、その日に売れなかったとうもろこしは捨ててしまうぐらいのコンセプトでその日の直売で必ず売り切る。売れなければ次の日に販売はしない。それぐらいのこだわりをもって努力しました。あとは味の良さはあるんですが、食べてみないと分からないのでパッケージにこだわって、「人にあげて喜ばれるともろこし」にしようと思いギフト向けに箱を作ったり、鮮度を保つためにフィルムで包んだりしました。
Q.収穫量は?
例年だと約8万本~9万本です。二人でやってる小さな農家としては驚かれるような数字です。あとこだわの部分で一本一本手で植えているのでその時期は毎日やっている状況です。恐らく一般の方がやれば、一日300本ぐらいが限界だと思います。現在は慣れてきたので、一日5000本から6000本ぐらいはできますが、最初は想像も出来ないくらい大変でした。また天候にも左右され、とうもろこしは収穫の際に背が伸びるので、強風で倒されることもあります。
Q.パッケージについて
二人で相談して作りましたが実際は大変でした。ちょうど立ち上げの時にデザイン会社にいた女性の幼馴染が会社を辞めて、相談をしたら組んでくれる事になりました。こちらの思いも含めて、手に取って貰えるような女性目線のデザインをしてくれました。
Q.これからのビジョン
元々は営業職で人と話すのは得意なので、ともろこしに限らず本当に良い野菜を消費者に届ける卸業をやりたいと思っています。東京、名古屋、大阪を中心に良い野菜を求めているニーズが分かったので、すぐに対応するべく会社を法人化をして自分達で販路を広げ、さらに信州のソウルフードである「おやき」をパッケージ化して加工品販売などをしていきたいと思っています。また、自分達の会社の理念として「農業の無限の可能性」があります。農業は他の業界に比べて出遅れている事がたくさんあると思いました。 僕らがこうやってパッケージングしたのもそうですが、「新しい価値を見出していく」という事がやりたかったんです。農産物というものは、体験型の魅力だったり見せる楽しみだったり、方法は問わず面白いことをやっていこうと思っています。
Q.農業の現実
しっかり稼ごうと思うと苦労すると思います。食べ物を作っているのでお米や野菜なんかを作れば生活はできると思います。特に女性はガーデニングのイメージでお洒落に思っているかもしれませんが、実際は夜中の1時や2時に起きて作業するんです。相当、過酷な仕事でそこらへんのギャップがあるのは確かです。僕らも日々の作業に追われ、販路を見出す時間がなく実は3~4年間ほぼ収入が無かった時期もありました。
Q.自治体、行政の支援
農業は他に比べ、担い手が減っていく中で割と補助金や制度があり支援はしてくれます。ただし、実際にどこまで動いてくれるかはあまり期待しない方がいいと思います。地域のなかには頑張ってやっている人もいるので、もっと支援をして欲しいです。
Q.これから農業を始めたい人へ
夢をもってこっち側に来る人に自分達はこんなやり方もあるんだという事を身を呈してやっているつもりです。だからそれなりの覚悟を持ってきてほしいです。正直好きな事をして暮らしていくのは大変です。ですからそれなりの準備をしてきてほしいです。もし好きな物を作りたかったら、ブランディングしたり販路を自ら広げていったりそういう意識が大切です。そういった意味ではこれから伸びていく業界と思っていますし、そういう人を求めている業界です。ぜひいろんな思いを持って来てください。
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